【活動報告】一宮市立図書館子ども司書講座 3回目

イベント名:一宮市立中央図書館 子ども司書講座

日時:8月9日(水)10:00ー12:00 参加者:16人 

一宮市立中央図書館で行われる「子ども司書講座」の第3回の講座を担当しました。その様子をレポートします。(文責 山本茜

一宮市では、2015年から子ども司書講座を開始。「子ども司書講座は地域や学校で読書推進のリーダーとなるような児童を育成すること」を目的として、7月からにかけて全6回行われます。第1回目の内容はこちらをご覧ください。

knowledge-net.hatenablog.com

 

1.ビブリオバトル× 探求型読書 

今日のテーマは「ビブリオバトル」でした。ビブリオバトルは、「好きな本を紹介して」「一番読みたい本を決める」という内容。

講座開始前に、到着する子どもたち。始まる前までの時間は、本を読んでいる子どもたちがチラホラいて、「何読んでるの〜?」と司書さんと話しています。そして、すでにビブリオバトルみたいなことが自然に始まっている・・。

発表までのプロセスを本の関わり方、読み方を考える、楽しいプログラムにできないかな・・と考えていた時に、「探求型読書」(著者:編集工学研究所 出版社:クロスメディア・パブリッシング)のことを思い出しました。この本からエッセンスをいただいて、プログラムを考え実施しました。ビブリオバトルの公式ルールにも則って行いました。

www.bibliobattle.jp

 

探求型読書とは?「探求型読書」P34ページより引用

探求型読書は、物事を深く思考したり、自分なりの考えを組み立てたり、問題を追求し続けるための「手段としての読書」です。「本の内容を余さず理解しながら読み通すこと」を読書の目的とするのではなく、自分の思考を縦横無尽に展開させることを目的に本を活用すること、「本を読む」ことそのものより、「本を手がかりにして、考えること」を推奨するメソッドです。

これだけ読むと、「難しそう〜」と思われるかもしれませんが、「楽しく思考」「読書への思い込みを外す」「色々な読み方、楽しみ方があることを知る」をテーマにして、プログラムを考えてみました。

 

2.本を読むことは、中身を読むだけじゃない!

探求型読書の方法として、3つの読み方を提唱しています。

① 読前(本を読む前の読書)

②読中(本の中身を読む読書)

③読後(本を読んだあとの読書)

「本が読めんなかった」「〜冊読んだ」という言葉からもわかるように、多くの人は「本を読む」とは、「本の中身を読むこと」だと考えています。中身が読めてこそ、読書。「中身読めなくて、目次しか読めなかった〜」なんて、卑下するような会話をよく見かけます。

本を読む前の「読前の読書」も超重要な読み方。

本の読み方の思い込みを外す最初のワーク。

隣の人とペアになって、本の表紙、目次、裏表紙、袖をよく眺めてみました。

ワークのあと、どんなことに気づいた??と、聞きました。

ある女の子が、

「目次の書き方が違うことに気づいた。目次のところにも絵が書いてあることに気づいた。」

目次の絵にも、本の中身に関わる何かが書かれていたかもしれないし、本の世界への入り口への扉なのかもしれない、著者が伝えたいことが現れていると伝えました。

2.本の地図をつくろうワーク 「ぐりとぐら」のキーワードを出してみよう

ビブリオバトルで、本を紹介するための「準備」として、本の「キーワード」を取り出すワークをしました。「ぐりとぐら」を誰かに紹介するとしたら・・どんな言葉があるかな?と聞いて、一人ずつ言ってもらいました。

「ねずみ」「動物」「卵」「ケーキ」「ホットケーキ」・・・最後の方になるほど、思いつかない・・!うーん、難しい!

今出てきた言葉の言い換えを考えてみよう、ねずみがどんなキャラクターなのか表す言葉を考えてみようと投げかけ、どんどん出してもらいました。

「アイディアマン」「努力家」ねずみがどんなキャラクターかを現す言葉を誰かの意見をヒントに展開していきました。

「シリーズ」という言葉も出ました。本の中身以外に関する情報。これを出してくれたのは司書さんです。さすがです!

以下のことをヒントに、自分が持ってきた本でもキーワード出しをしてみよう!

・ある1つの言葉の「言い換え」をしてみる

・5W1Hで考えてみる

・どんな〜かを考えてみる。

・本の中身以外のことを書く


2.本の地図をつくろうワーク 自分が思ったことを出す

本の中で「?」と「!」と思ったこと、わくわくした場面、好きなところ、好きなページ。

また、本に限らず、YouTubeなど他のメディアでもOKと伝えました。

ぐりとぐらなら・・

・かすてら美味しそうだなぁ

・たまごをどうやって運ぶかを考えるところが面白いなぁ。

・卵を運ぶのは、試したらできるのかな?

・何の動物の卵だったのかな?

・かすてらってどうやってつくるのかな?YouTubeや本はあるかな??

ぐりとぐらの他の絵本を読んでみたいな

3.本の地図をつくろうワーク 話す準備をしよう

付箋の中から、これはみんなに伝えたい、この本のここが大好き!と思うことに★印を

つけてもらいました。

「私は、質問ばっかりになっちゃったけどいいですか?」と聞いてくれた子がいました。

質問しか浮かばないのは、素敵なことだからそれでも大丈夫!と伝えました。

 

 

3.ビブリオバトル・質問タイム・せーのでチャンプ本を決める

「発表」だと緊張してお話しできない子もいるかもしれません。発表ではなく、ここにこんなことを書いてあって・・と、本の地図を紹介するように発表しようとお伝えしました。

1人3分で発表。その後、質問タイムを取りました。「3分間話すの難しい!」1分半くらいで終わってしまう・・どうしよう、困ったな・・。すると、グループのメンバーが質問してお話しを引き出している様子も見られました。ビブリオバトルでは、本来は、発表と質問の時間は分かれており、話す時間はひたすら話すものですが、グループの中に、質問し合える雰囲気が醸成されているから、自然に質問も出てくるように思いました。

 

 

3.振り返り 自分のわくわくの種を書く

全てのワークや発表や対話を通して、やりたいな、読みたいなと思ったことを書こう。「自分のわくわくの種」を書き出そうとお伝えしました。「〜さんの紹介していた本を読みたいな」「こんなジャンルの本を読んでみたい」という「本」のことや、行ってみたい、やってみたいという本にこだわらないことも出してみよう。振り返って、わかったことを紙に書いて眺める、誰かに話すと、さらに楽しい世界が広がることをお伝えしました。

4.まとめ

探求型読書の読前、読中、読後のステップを改めて紹介。探求型読書は、「本」を通して、考える、探求するための読書。そこでは、「問う」力を育てています。今は、正解のない問題がたくさんある時代と言われています。例えば、新型コロナウイルス感染症、3年前は、人々はどうしたらいいかわからなくて右往左往して、問題に向かってきて、3年後の今と3年前は、コロナに対して、全然違う向き合い方になりました。それは、人間が遭遇したことがないことに対して、「どうしたらいいかな?」とたくさんの「?」を出し、「問う」ことをしてきたから。本を読むのが大好きなみなさんは、そんな「問う力」を持っていることを伝えました。

最後に、「本」と「本がある場」を仲間にして、楽しんでいってもらいたい、それが子ども司書の力、役割であるということをお伝えしました。子どもの頃の自分はまさに、子ども司書講座にいたような子どもだったのですが、子どもだった自分にどう言葉をかけるだろうかと想像し、伝えました。