ひとファインダー ー稲葉久之さんがファシリテーターになるまでー

  フリーランスファシリテーターの稲葉久之さんは、いつもにこやかに場にいながら、場を観て、的確に論点もつかんで問いを出す人。プロジェクトマネジメントも鮮やかにこなす人。

 稲葉さんのHPです。

hisa-inaba.blog.jp

 数々の対話の場のファシリテーターとしての稲葉さんを知っていても、「稲葉さんが自分のお話しているのは聞いたことがない・・!」そう思っていた人も多いのではないでしょうか。

 最初のチェックインで、稲葉さんに聞きたいことは?と参加者に尋ねると、「睡眠時間は?」「好きな食べ物は・・??」そこーーー?!となりました(笑)

 しかし、普段、自分のことを語らない稲葉さんだからこそ、ミステリアスにも思えるので聞きたくなる気持ちもわかります・・。

 今日は、稲葉さんがファシリテーターになるまでの物語をお聞きしました。

 子どもの頃は、上にお兄ちゃん、下に妹がいるポジション取りが難しい真ん中の子。人前に出るのはそんなに得意じゃなかったのに、学級委員長になったことをきっかけに、中学、高校、大学まで、生徒会長を務めます。「自分が前に出ていくリーダーではなく、役割に応じていくことが楽しかった」ということで、サーバントリーダーシップ(現場の声に耳を傾け、共感、協働によるリーダーシップ)に通じるものが子どもの頃の姿にあったのかなーなんて思いました。

 「ファシリテーション」という言葉に出会った時は、日本語で書かれたファシリテーターの文献が全くない時代。英語の文献を読み漁って学びながら、国際協力の現場に憧れをもち、大学では、学ぶことが楽しくてしょうがなかったといいます。

 大学を休学して、ブラジルを放浪しようと計画。その前に、半年間お金を貯めるためにたまたまバイトで入った会社で、ちょっとバイトのつもりが、情報技術を会社の現場に使いやすいようにコーディネートするような社員並の重要な役割の仕事をします。働く現場の面白さに目覚め、それまで大学院進学しか考えてなかったのに、「働くのもいいかも・・」と思ったそう。それが、その後、ブラジルの放浪を経たあとの「働く」ことへのポジティブな印象に変わったといいます。

 初めて、青年海外協力隊で行ったセネガルでは、数々の失敗も経験。その地域ごとの見えない当たり前のルール、文化、考え方、コミュニケーションの方法は目に見えるものではなく、ファシリテーターとして関わって、うまく伝わらない場面に出会って、気づく。その度に、ありかた、関わりかたを変える・・その積み重ねでファシリテーターとしての稲葉さんとなってきたのでした。

 ファシリテーターとして場にいる稲葉さんは、無色透明、中立な存在。子どもの頃から一貫してきたのは、「人と関わること」が好きということ。静かな佇まいの中にある好奇心やエネルギーを垣間見ることができました。