東海ナレッジネットがファシリテーション研修をする理由

今年度は、「東海ろうきんNPO支援事業」の助成金で、ファシリテーション研修を実施しています。ファシリテーション研修は、東海ナレッジネットが主催しなくても多くの団体が、開催しています。でも、東海ナレッジネットでやる必要があるとも感じて、メンバーと一緒に企画しました。なぜ、わたしが、ファシリテーション研修が大事だと考えているのか、長文になりますが、お伝えします。(文責:事務局 山本茜
 
1.東海ナレッジネットって?
 
東海ナレッジネットは「知」「情報」「文化」を取り巻く人、組織が共に学び合うコミュニティです。このように言うと、たいてい「なんか難しいこと、敷居が高い」ことをやっていると見られます。それは、人々が「知」「情報」「文化」を、どう捉えているか・・みんなの認識の現れだと思っています。「インテリ」「知識偏重」「格式や権威」があるものとして知は捉えられる場面もあります。(「そんなに本ばっかり読んでないで!実践が大事」とか、「あいつは頭でっかち」「理屈っぽいよね!」って言われたりする言葉)そして、情報は、ICT、データ、統計、無機質なものとして捉えらえていると思います。また、文化も伝統や権威的なものが、文化として語られる場面もあります。
 
実際の世界では、「知」も「情報」も「文化」も、さまざまな国籍、価値観、障害や病気と共にある人、あらゆる世代の人たちにとってすぐそこにある、身近で日常的なものです。
「わたし」の毎日を楽しくしたり、元気をくれたり、一歩前に進めるために存在していると思います。「情報」や「文化」や「知」を「自分」のものとし、それらが集積される図書館などの知の基盤を自分でつくり、自分で活用していける市民社会になるといいなぁと思います。(これでもまだ硬いですかね)
 
2.「情報」や「文化」や「知」を取り巻く世界とわたし
現代では、インターネット上には、昔は、手に入らなかった情報が溢れています。
自治体や企業は情報のオープンデータ化を進め、誰もがアクセスできるような環境を用意しています。サブスクで音楽を楽しみ、漫画を読んだり、本を読んだりできます。古い資料も図書館のサイトから閲覧できるようにもなっています。
 
知りたいことは、スマホやパソコンを叩けば出てきます。
福祉や医療、生活上の困りごとへの情報もインターネットで検索できるよう、さまざまな組織は発信しています。SNSでは、個人が集めてくるオススメや個別のニーズや地域に応じた情報が得られます。多くの「情報」「知」「文化」に触れられる社会になりました。
 
3.情報があれば助かる、それホント? 
 
「もっと困っている人たちにわかるように、インターネットに情報がまとまっているといいのに!」という声は、市民活動、生活困窮の方や、子育て支援をする方からよく聞かれます。
 
私はその言葉を聞くたびに、「インターネット上にある情報を探せる」ということは
当たり前のことではないと思うのです。
 
情報があれば助かると思っている「あなた」と本当に困っている人の状況は異なっている
かもしれません。
 
たくさんの情報から探そうと思えること、ツールがあること、環境があること。
それらの要素が自分にあるから、たくさんの砂粒の中から一粒の情報を見つけることは
できます。それまでの生活・教育の中で獲得してきた力や環境であり、その力を獲得できなかった人たちもいます。インターネット上にある情報を探し、読み解くのは、心と時間に余白があるからできることです。
 
「情報がある」ことが、すなわち、人々の豊かさや困りごとが解決されることにつながっていないのかもしれないと思うのです。
 
情報がある人とない人の分断を深めているかもしれない。
情報がありすぎることによって孤立しているかもしれない
翻弄されているかもしれない。
「こんな情報があるよ」「困っている」「助けてほしい」と情報をつなぐ人の存在や関係性の方を必要としているかもしれない。
 
4.「情報」と人、人と人をつなぐためのファシリテーション
   
自治体、図書館などの知識情報基盤、文化施設などの情報がある場を作る人は、「環境を準備したからご活用ください」と言います。
 
情報を活用する、情報の価値を判断するのは市民であると考えます。
情報を得られる環境をいかにつくるかということに視点が向きます。
そうするほどに、実は、情報の先にある人との距離は遠くなっているかもしれない。
 
そんな状況をみて、情報・知・文化をつくる・集める・提供する人・組織とその先にいる人、そして人々を支える人たちとの対話、関係性のある場をつくれることが大事だと思うようになりました。そのためにはファシリテーションが大切であると考えました。
 
 5.東海ナレッジネットが考えるファシリテーション研修
 
メンバーとの議論の中で出てきたお話。
ファシリテーションを研修で学んだことが「良い思い出、非日常になり、現場に生かされないあるある!」に陥る機会にはしたくないなぁ・・ということ。
ファシリテーション」について、ワークショップを実施したり、付箋や模造紙といった表面的なツールという理解が先行していることが、かえってファシリテーションへの敷居を高くしているようにも思います。そして、ワークショップを企画する人ばかりではない。
 
〝人と人が関わる場、組織、チーム、そこにいる一人一人の声、力、存在を大切にして、前に進むための話し合いや関わり合いの場をどうつくるのか?〟というお題は、ワークショップをやる機会がない人でも身近な課題であると思います。
参加者それぞれの現場にかえった時に活かしていける機会にしてもらいたい
という狙いから今回の講座の講師の選定や全体の構成を考えました。