活動報告:ぷらんと!創造的な学びと図書館

イベント名:創造的な学びと図書館

日時:12月9日(金)19:30ー21:00 参加者:7人 

「学習する組織」や「システム思考」について学んだ3人(山本茜、上杉朋子さん、豊田高広さん)が、「図書館」は人々の創造や学びに深く関わることを感じ、誰かと話してみたくなった・・そんな経緯でお話しする場をつくりましたので、レポートします。(文責:山本茜

 

1.学習する組織を学び実践するシステムリーダーズ実践コミュニティとは?

豊田さんは第3期、私と上杉さんは、第4期に参加しています。「学習する組織」、「システム思考」をベースに学び実践するコミュニティです。

このコミュニティでは、人それぞれの生活の場、仕事、人間関係をよりよくするその一歩を踏み出していくことを「リーダーシップ」と考えています。「わたし」が本当に願っていることは何か、または阻んでいるものは何かについて考え方を学び、日常化していくための学びの場です。

▶︎システム思考って何?

 人間関係でも、職場でも困難な問題を前にすると、「これが悪い、あれが悪い」と捉える時、「それって本当にそう??」と想うことはありませんか。または、「これが悪い、こうすべき」と思って行動したら、うまくいかないということはありませんか?

 人の価値観や思い込み、構造、どんな経過をたどってきたか、それらの要素が複雑に絡まり合い、自分には「問題」となって見えます。「問題」全体を関係性(システム)で捉えて考えていくのがシステム思考。今はこの学びの折り返しを迎えました。システム思考は、この世界を見るツールとして自分に携えていくもののように感じています。学校の先生、会社員、NPO関係者多種多様な人がオンラインで学びあっています。オンラインなのに、なぜか会って話しているように温かい、ほっとできるような場です。

 

sites.google.com

2.ビジョン・学ぶ・システム・リーダーについての勘違い、思い込み

ビジョン、学ぶ、システム、リーダーという言葉について、社会の中で使われる文脈は、実際の意味とは違う使われ方をしているように思います。このコミュニティでは、それらを捉え直して学んでいます。

▶︎下記のように思っていませんか??

「ビジョン」上から示されるもの、会社のビジョンをトップが示す・・、なんか意識高そう・・私はビジョンとかはいいわ・・

「学習」知識を習得すること、真面目なこと、学校で教科書を読んで学ぶこと

「システム」機械的、非人間的なイメージ、暖かさがない

「リーダー」グイグイ引っ張っていく、えらい人、管理職、秀でた能力がある人

「わたし」に関係のないものとして、捉えるかもしれません。全く逆でした。

自分ごとで、温かく、自分の力が自然に出てくるようなものでした。

 

赤ちゃんが歩けるようになる、子どもが遊びの中で試行錯誤する・・その過程には強制される学びはありません。赤ちゃんが自らやってみたい、こうなりたいという自然な欲求から人間の成長発達は起きます。「学習」とは本来そうしたものである。自分が関わることについてこうなってほしい、こうしたいという思いや自分の喜び(ビジョン)があり、現実を前に「一歩踏み出していく」ことがリーダーシップ。今回は、3人が、学習、ビジョン、リーダー、それぞれについて図書館とどんなつながりを感じているかをお話ししました。

3.学習・ビジョン・リーダーと図書館はどうつながるか

今回話題提供した3人は図書館とのつながりを感じて、思わず話したくなってしまったのですが、「図書館」にそんなに深く関わっていない人には何がどうつながるか、イメージできないかもしれません・・それぞれについてどう考えているかお話ししました。

1)「学習」×図書館 

私からは、「学習」と図書館についてお話ししました。

子どもの頃、好きだった絵本、お気に入りの一冊がありました。絵本の中の子どもが、「自分で何かをやってみる、困難を解決していく」ことにスリルやワクワクを感じて読んでいました。それは、「はちうえはぼくにまかせて」という絵本です。

www.ehonnavi.net

主人公トミーは、夏休みにバカンスに出かけてしまうご近所の方からはちうえを預かる約束をします。トミーは植物のお世話が大好き。毎日せっせと植物に水をあげるなどのお世話をします。どんどん植物が成長し、いつしかジャングルの中で生活しているかのような状態になります。トミーは図書館に行き、植物の育て方の本を借りて、学びます。そして、植物の特性に合わせた環境、水やりをします。剪定した木は接木にして、小さな鉢植えにして、夏休みが終わるころにご近所の人に配り、近所の人は「はちうえがきれいになって、おみやげまでついてきた!」と大喜びで帰るというお話しです。

この絵本には、人の学び・図書館が描かれています。トミーがはちうえのお世話をしたい、楽しいという願いがあり、トミーは実践します。そこに関わるお父さん、お母さんの姿があります。トミーの挑戦が、うまくいかなくなった時、トミーは「図書館」に行きます。

習得した知識を実践し、困難を解決していきます・・人が何かをしたいと思う、その先には「知る」ということがあります。「知る」ことを経験に活かしていく。そして、人の中に経験知が増えていきます。その循環を助けるものとして、「知」の保存庫である「図書館」の存在があります。

2)「ビジョン」×図書館

上杉さんからはビジョンのお話をしていただきました。

上杉さんは図書館で働いています。

昨年度、図書館を運営していくための「基本計画」を策定しました。この時に、市民ワークショップを重ねて「どんな図書館にしたいか」「図書館でこんなことがしてみたい」といったことなどを話し合いました。 これは、ワークショップの参加者にビジョン=「心から創り出したい状態=What I want」を思い描いて話してもらう機会だったのだなぁと、メンバーと一緒に学ぶなかで思いました。同時に、この時に、市や図書館としてのビジョンも出しあって、互いにしっかり語り合える時間があったら、もっといい計画になったかもしれない、そんなことを考えているということです。上杉さん自身が、ビジョンについて話す場に参加するうちに、周りの職員と「心から創り出したい状態=What I want」について日頃から話をしてみたいと思うようになったそうです。

3)リーダー×図書館

豊田さんからはリーダーと図書館についてお話していただきました。

図書館という組織におけるリーダーとはという視点で図書館とリーダーを捉えるのが誰もが思いつくことかもしれません。豊田さんは、図書館という存在が、「リーダーシップ」によい影響をもたらすのではないか、そう考えているそうです。そもそも、図書館について、よく巷で聞かれるイメージは、「リーダーシップ」とは関係がないものと思えます。

本好きの溜まり場、静かで古臭い、文学ヲタク的、子どもや高齢者が行くところ・・図書館については、このようなイメージで捉えられていると思います。「そうじゃない図書館だってたくさんある!!」と思う方もいるかもしれませんが・・。

豊田さんは下記のようにリーダーシップと図書館とのつながりを考えているそうです。

豊田さんのスライドより転載

集合的リーダーシップを担う人々(システムリーダー)の3つのコア能力と、図書館の可能性

 ①より大きなシステムを見る ←森羅万象の(未)知へのトビラになる

 ②内省的な対話を促す ←多様な人々との出会いを対話につなげる(交流⇔内省) 

 ③関心を未来の創造へ移す ←今を記録(アーカイブ)し、過去の文化資産も動員して、未来へのステップに変える

社会的インフラ=「場」としての図書館(クリネンバーグ『集まる場所が必要だ』英治出版

 

例えば、仕事でモヤモヤと悩んでることがある、図書館の中を歩き回る、歩き回り気になる本を手に取る。自分が気になっていた言葉が目に入る・・近視眼的になっていた視野が開ける感じがする・・それはどうしてだろうと対話する・・ということが図書館にいる時に私の心の中では起きます。場としての図書館にはそのような力があるのではないでしょうか。

そもそも「システム思考」のシステムは、森羅万象そのものであり、図書館そのものが森羅万象が集積され、分類されているシステムとも言えるのかもしれません。「リーダー」とは線を超えていく人。自分の目の前のハードルを超える、組織を超える、地域を超える・・その一歩を踏み出すきっかけが図書館にはあるのでは。

 そして、社会教育施設としての「公民館」は、本来は地域課題への取り組みや社会運動が生まれる場であるはずです。知のインフラとしての図書館(知る)と、公民館(実践)が連関することで、あらゆる市民のリーダーシップを育むインフラとなり得るのではないか。

3.参加者意見交換

参加した方は、このコミュニティに参加している方(会社員、学校関係者)や、東海ナレッジネットに集う人(NPO関係、劇場関係者)でした。

参加者で自由に意見交換しました。

・図書館と劇場との親和性

劇場に今勤めているが、劇場の動的なところと図書館の静的なところは相性がいいのではないか。一つのお芝居を見るとテーマになっていたことについて知りたくなる、脚本家について知りたくなる、原作が読みたくなる・・というふうに知的好奇心が喚起される。そのような点から図書館と劇場は連関し合うのではないか。

・劇場に人が集まる、同じ時を共有する、それが繰り返されることによって、場と人の間には物語や見えない歴史が生成されていくと想うがそれは図書館的でもあると想う。

・自分と図書館の関わり

 図書館、本とのたくさんの関わりが自分をつくっているということを思い出した・・

・「図書館に行ったら、何かに出会えるかも」と思ってもらえる図書館を目指している。

でも、そうした場所って他にもあるのではないか。「図書館」的なことは図書館の外にもある。

 

本がある場としての「図書館」または地域社会の「図書館」的な場や機能は、人々の創造や生きることにどう関わるのか、引き続き深めていきたいと思いました!

ご参加いただき、ありがとうございました。