【活動記録】フリーライブラリアン養成課程を妄想・構想しようvol.2

12月6日19:30ー21:00 フリーライブラリアン養成課程を妄想・構想しようvol.2  

参加者:12人
 
東海ナレッジネットのぷらんと!は、さまざまな立場・領域の方が集い緩やかに雰囲気の中でお話する場です。いつもは参加者5人、6人という感じなのに、この日はなんと参加者12人。(ブレイクアウトルーム機能を久しぶりに使ったために操作を誤り、混乱した状況になってしまい申し訳ありませんでした・・)
図書館関係者10名弱、図書館の外、市民として利用する立場の方2名、図書館と地域をつなぐ活動をしている方2名といった参加者構成でした。
以下ご報告します。(文責 東海ナレッジネット 山本 茜)
 

この議論が始まるきっかけ

第1回は、2021年7月18日に行いました。
きっかけは、一宮市の図書館ボランティア団体りぶらぼの西村さんが、フェイスブックでつぶやいてくれたことでした。西村さんや私は、フリーライブラリアンのマインドをもって活動をしています。図書館と地域をつなぐ存在を、「フリーライブラリアン」として定置すると楽しいんじゃないか・・と、発信してくれました。その発信を受けて、みんなで話す場をもってみたら、とっても面白く、新しさを感じるテーマであると思いました。
7月の会でのお話の内容を豊田高広さんが、大学の授業でお話してくださいました。
今回は、学生さんの反響も含めて紹介していただく会として行ました。
ここからは豊田さんにお話していただいた内容を中心にご紹介します。

フリーライブラリアンってどんな人??

ある参加者の方が、「フリーライブラリアンについて学びたくて参加しました」と、仰いました。フリーライブラリアンは、しっかりとした定義が確立されているものではありません。「養成課程を妄想しよう」と大きく出ていますが(笑)養成課程の議論には至らず、フリーライブラリアンとは何者かという議論の段階です。既存の図書館、司書の姿に囚われずに自由に楽しく議論していきたいと思います。
 
フリーライブラリアンとは・・・
▶︎図書館の外(市役所、自治体の図書館以外の施設)で、図書館司書さんが有する専門知識を伝えていく。例えば資料の整理や情報探索を支援する。
▶︎図書館の外(地域)で、職業ライブラリアンと地域社会をつなげる、図書館の役割、人文主義的な価値観(何かを考える時に知る、調べることを重視する)を伝えていく。
職業ライブリアンのような専門性、スキルは持たない。専門性をもつ職業ライブラリアンとつなげ、理解を広める。
▶︎地域で、まちライブラリーのような拠点をつくる
▶︎自ら地域の歴史を調べ、ウィキペディアの編集をする。
多様な姿がありますね。もっと他にもあるかもしれません。
 

フリーライブラリアンとしての生き方

図書館の司書課程の授業の中では、「司書+α」のスキルをもつといいと触れられることもあるようですが、「α+司書」とも考えられます。この場合のαは、いわゆる「本業」。
「α+β+...+司書」でも、もちろんよいし、それこそが時代の求める生き方としての「三 流」(後述)かもしれません。司書一筋の「一流」ねらいも、三筋以上の特技の一つとしての司書という「三流」 ねらいも「あり」。(安田登『三流のすすめ』ミシマ社参照。) 

図書館の外に目を向けると、パラレルキャリア、複業、副業・・働き方は多様な時代

「α+司書」というあり方は、図書館関係者の間では新鮮に受け止められたように思います。
でも、図書館の外に目を向けるとどうでしょうか。今や、副業・複業をもって働くことや、一つの組織に所属せず、自分のスキルや好きなことを活かして、組織や地域で活躍していくというあり方は当たり前のものとなりました。
 
ちなみに、私は、普段は二つのNPO法人でお給料をもらっています。時々個人事業でも仕事をいただいて、ファシリテーターやチラシを作成したり、イベントや研修を企画したりもしています。東海ナレッジネットの活動は、自分の能力を活かし、気になることを形にしていくライフワークです。
 私が、NPOに飛び込んだのは、2000年代、25歳の頃でした。複数の仕事を持つ人、会社員をしながらNPOで活動する人、名刺を何枚ももち、いくつもの法人を渡り歩いて働いている人々に出会いました。そうした多様な働き方をする人で構成されているのは、NPO法人の財源の不安定さから、フルタイムで働く人を雇用するのが難しいからでもあります。しかし、不安定だからこそ、さまざまなな関わり方の人と共に事業を進めていく土壌が形成されていました。私は、どうしても図書館司書になりたいのに、なることはできないと思っていた学生時代を過ごしていました。失意の中で飛び込んだNPOで働き方、生き方は自由で多様であることを知ったことがターニングポイントとなりました。
図書館にもこの考え方を持ち込んだ時、「フリーライブラリアン」という存在が立ち上がってくるのではないでしょうか。
 

学生さんの反応と司書課程のあり方

<正規採用が厳しいことを知り、司書資格をとっても最初から司書として働くの は無理と思っていたが、「FL」や「α+司書」はいい意味で衝撃。資格取得のモ チベーションが上がった>
<先生が指摘したように「公共図書館が、 図書館内外で活動する FL のための ホームベースのような存在」になれば、より豊かな社会を築いていける>
 
豊田さんは最後に、これからの司書課程の在り方を提言されていました。
▶︎正規の司書になるのは難しいということばかりが強調されているのではないか?
▶︎図書館外側、市民社会の中で活かしていく道についてももっと伝える、経験する場面があってもいいのではないか。
▶︎さまざまな人と関わり合いながら仕事をしていくためのスキルとしてファシリテーションの学びが有意義ではないか。
 

参加者から聞かれた意見・感想

▶︎自分は図書館の現場であったり、地域であったりを想像しています。図書館のありよう(しがらみ?)からも「フリー」になると考えると、「ライブラリアンって何する人だっけ?」とそもそも論に戻ってしまいますが。
▶︎司書の専門性とは何か、図書館とは何かという議論に戻っていく。
 図書館の人が思っている「専門性」と、市民が思っている「専門性」には乖離がある。フリーライブラリアンの議論を、図書館の外・中の人を交えて進めることが、図書館そのものの存在を考えることになってよい。
▶︎大学の司書課程で資格をとりましたが、「情報の専門家であれ」と言われて学びました。そういった点を下地に、さまざまなモノ・コトを跳び越えていけるといいのかなと思いました。あえてフリーは定義してしまわず、ふくよかに意味をもたせておくと楽しそうですね。
▶︎図書館の外で活動したいライブラリアンにとっては、フリーライブラリアンと名乗れるようになると良いのかなと思いました。「ライブラリアンでありたい。でも図書館にはいない」という自分にとって、自分は何者なのかという問題への一つの答えのように思っています。
▶︎図書館とは、図書館員(の専門性)の話とかに行き着いちゃいますね。 個人的には、今フリーライブラリアンを名乗ってらっしゃる方々は、大学図書館学校図書館・司書教諭・医療健康情報等がバックボーンにあって、退職?フリー?からのフリーライブラリアンだと思っています
▶︎「図書館」の機能を拡張した結果、生まれてくるコミュニティのようなもののように感じた。
▶︎図書館の外(例えば図書館の人が役所に異動した際)で、図書館の専門性が何かは理解されていない場合があるので、押し売りしないで、発揮できるところを見つけたら発揮する。
▶︎資格を日々の生活や暮らしで活かせる場面がある感覚なのではないか。「働く」「仕事」の捉え方の変容が大切だと思う。
▶︎自分のもともとの思考をたどると、フリーライブラリアンという立場を想像することで、翻ってライブラリアンを自認する人に専門性とはなにかを迫りたかったのかなと思いました。最初にあった1910年ごろのアメリカのライブラリアンシップ論争でもライブラリアンの専門性とはなにかというのは実は言われていて、決着のつかなかったことでもあります。しかし、21世紀の日本においての議論は、このままコミュニティという方向性も見据えながら、新しい図書館の在り方を探り続けていくことが大切なのかなと思います。ただまぁ、そういうの関係なく単純にフリーライブラリアンと名乗るのがゆかいになってきたので、そういう意味で私もFLを自認していきます! 
▶︎フリーライブラリアンって枠組みを軽やかに超えていく流しの図書館員っていうよりも結局はボランティアなんでしょうか?なんてことを考えながら聞いていました。ありがとうございました。
▶︎初めて参加させていただきましてありがとうございます。フリーライブラリアンのフリーというのは、図書館司書が図書館から出て自由に考えよう、というのが今日語られたことだと思いました。私はまさに非正規司書として詰んでいるので、そこから自由になるべきなのかもしれません。
 

まとめと今後の議論

「フリーライブラリアン」とは何かを考えることは、「仕事」とは何か、「図書館」とは何かを考えることだと思います。
『「仕事」とはどこかの組織に雇われ、職業としてお給料をもらうもの』そう考えて、司書として働ける仕事を探していく。そのようなキャリアの重ね方も一つの姿で、それだけではありません。「仕事」とは、自分が好きなこと、自分が関心があることを活かしていくことと捉え直すと、多くの職業の中に、暮らしやボランティアの中にも自分が生き生きする「仕事」が見えてきます。自分が思っていなかった生き方、自分の強みや喜びを発見できるかもしれません。
 
司書=図書館という捉え方の枠組みを外す議論のきっかけが「フリーライブラリアン」です。そして、「図書館」の専門性ってなんだろう?どんな存在なんだろう?と、図書館関係者と多様な人々との間で、「図書館」とは何かを考える対話の場が生まれると思います。
フリーライブラリアンの姿も色々ってことは、養成って無理じゃない??
そんな風にも思います。ますます混迷を深め(笑)楽しくなってきました。
既に活躍するフリーライブラリアンを発見したら、お招きしてお話していきたいと思います。